ミックスボイス を会得するための様々なメソッドやアプローチがあります。
ボイストレーナーはそれぞれ核となるメソッドを持っていたり、様々なメソッドを融合したりと、皆さんが理想とする声を出していただけるように日々兼山を積んでいます。
今回は、僕が使用しているいくつかのメソッドの中から、フースラーメソッドの看板練習法であるアンザッツをご紹介します。
このアンザッツを採用しているボイストレーナーは多く、色々な流派の源にもなっています。
自由な発声を目指して、バランスよく喉を鍛えたいのであれば僕の知る限り、今のところ一番お勧めです。
社会の時間に大政翼賛会などと一緒に出てきそうな名称ですが、違います。
フレデリック・フースラーという発声研究における偉人がこの喉頭懸垂機構という喉を吊る筋肉群を使って発声を行うことを発見しました。
筋肉の名称とその働きは以下の通りです。
a.甲状舌骨筋(喉頭を引き上げる)
b.口蓋喉頭筋、口蓋帆張筋などの口蓋筋群(喉頭を引き上げる)
c.茎突咽頭筋(喉頭を引き上げ、咽頭を広げる)
d.胸骨甲状筋(喉頭を引き下げる)
e.輪状咽頭筋(喉頭を後ろへ引く)
上記の筋肉を使用して、音色を変化させ、安定させることができます。
この音色を変化させ、安定させるというのは、ミックスボイスを手に入れる上で最も重要です。
SLS的に言えば、特にPull Chestの方(高音を大声で叫んでしまう症状の方)は音色を変化させることができずに、大声を出して解決しようとしてしまうので、声を薄くしたり、厚くしたりなどの音色を変化させる能力を身に着けることが必要です。
喉頭懸垂機構を構成する筋肉群をアンザッツを使って鍛えるのですが、実施する際には、7種類の声質を使用します。
アンザッツ の特色
それぞれアンザッツ1,2,3a,3b,4,5,6というように番号が振られて区分けされています。
さらに区分けすると、
- 地声系
- アンザッツ1(甲状舌骨筋、披裂筋群、声帯筋)
- アンザッツ2(胸骨甲状筋、斜横披裂筋、声帯筋)
- アンザッツ3a(胸骨甲状筋、輪状咽頭筋、声帯筋)
- アンザッツ3b(声帯筋、場合によって喉頭懸垂機構の筋肉群全て)
- 裏声系
- アンザッツ4(輪状甲状筋、胸骨甲状筋、茎突咽頭筋、口蓋喉頭筋)
- アンザッツ5(輪状甲状筋、甲状舌骨筋)
- アンザッツ6(アンザッツ4で使用する筋肉+輪状咽頭筋)
実際にはアンザッツ1を裏声で実施するなどの応用はありますが、基礎は上記のようにカテゴライズされます。
写真上で赤い部分と番号が振られているのが分かるかと思います。
発声時にその番号の部分に声を当てていくという感覚を手に入れる、または、当てていると感じることができます(個人差あり)。
アンザッツ をやる目的
僕ら人間は、生まれた時から備わっている発声のポテンシャルをフルに活かせているわけではありません。
人間が作った社会的制約(大きい声を出してはいけない、静かにしなさいなど)が元々持っている潜在能力を発揮することを許さないのです。
声を出し難いとは、言ってみれば現代病のようなもので、鍵をかけられてしまった喉を開放することが、アンザッツを実施する一番の目的です。
アンザッツを実施する目的というよりボイストレーニングを実施する目的ですね。
アンザッツの声質は、それぞれかなり偏っています。
それは偏った声質を出すことによって、鍛えたい筋肉に最大負荷をかけるためです。
苦手な番号がある場合は、その番号で使用する特定の筋肉を使うことが少なく苦手なため、結果的にその筋肉の動きが鈍いと言えます。
苦手な声質も克服し、元々得意な声質と合わせて取り組んでいきましょう。
アンザッツ の声質は歌唱時に使わない?
人によっては、アンザッツの何番が歌唱時に色濃く出るなどはありますが、実際、アンザッツで使用する音色は、ポピュラーミュージックを歌唱する際には、そのまま使うことはありません。
これは、あらゆるスポーツに置いて、オーソドックスなベンチプレスやデットリフトのようなウエイトトレーニングの動きが競技にそのまま反映されるか?と言われたらそうではない、ということ同義です。
あくまで競技レベルの向上や底上げには非常に役に立つという部類のもので、アンザッツも歌唱に置いて似たような位置付けとなります。
歌をやっている限り、ずっと続けていくべき基礎練習に位置付けてあげると良いです。
1人あげるとしたらEric Benétです。
この曲は2010年当時、獄中にいたLil Wayneが褒めちぎった曲でして、最高なのは言うまでもないです。
日本だとw-inds.がカバーしていることでも若干有名ですね。
この曲の3:41からなんてもう別人なんじゃないかという声です。
上記の2曲で分かると思いますが、この方はどんな声でも出る印象です。
その結果、中心となる歌声のバランスがよく、デビューから25年ほど立ち、現在54歳ですが、全く衰えていませんし、若いころより声がよくなっている印象です。
ここ何年かは、Sometimes I Cryのように裏声系の声を駆使して歌うことが多く、そのクオリティーは他の追随を許しません。
①喉頭懸垂機構
- 甲状舌骨筋(喉頭を引き上げる)
- 口蓋喉頭筋、口蓋帆張筋などの口蓋筋群(喉頭を引き上げる)
- 茎突咽頭筋(喉頭を引き上げ、咽頭を広げる)
- 胸骨甲状筋(喉頭を引き下げる)
- 輪状咽頭筋(喉頭を後ろへ引く)
②アンザッツ
- アンザッツの特色
- 地声系
- アンザッツ1(甲状舌骨筋、披裂筋群、声帯筋)
- アンザッツ2(胸骨甲状筋、斜横披裂筋、声帯筋)
- アンザッツ3a(胸骨甲状筋、輪状咽頭筋、声帯筋)
- アンザッツ3b(声帯筋、場合によって喉頭懸垂機構の筋肉群全て)
- 裏声系
- アンザッツ4(輪状甲状筋、胸骨甲状筋、茎突咽頭筋、口蓋喉頭筋)
- アンザッツ5(輪状甲状筋、甲状舌骨筋)
- アンザッツ6(アンザッツ4で使用する筋肉+輪状咽頭筋)
- アンザッツをやる目的
- 不自由になってしまった喉の機能を回復し開放するため
- 特定の筋肉群に最大負荷をかけるため
- 音質を変化させるため
- 音質を安定させるため
- アンザッツの声質は歌唱時に使えない?
あくまで喉を鍛えてバランスを整えるTool
7種類の声を出せるようになることも重要ですが、7種類の声を使って喉頭懸垂機構に刺激を与えて声のバランスを整えたり、機能を回復していくということが一番の目的です
アンザッツのそれぞれの練習法は、随時更新予定です。
アンザッツを使って発声のレベルをゴリゴリに上げていきましょう!
喉頭懸垂機構
アンザッツ
高次元で発声のバランスが良いアーティスト
まとめ